先日、年末の忘年会用のおちょこを探しに八王子でやっていた全国大陶器市に行ってきた。

まさに陶器が欲しい時期でいつ頃やっているのだろうなんて思っているところにちょうど良く広告が入ってきた。

これは行かなきゃならん。

仕事帰り、お目当てのおちょこを探しに隅から隅へ。

深い奴はあっても、お目当ての形状している奴がなかなかない。浅い杯の形している奴がいいのさ。

あとで聞いた話だと売れないから、あまりないようだ。
んでもさあ、冷酒飲むなら断然舌先に当たるそっちだろ~~ってなもんで、

立ち止まったら、早速声を掛けられた。
ん~~まだ悩んでいるところなのに。

「それで呑むとうまいよお」と、おっちゃんが言う。

おっちゃん酒飲むのかと聞くと、「呑めない体になっちゃったのよね」と言う。

3つこれ選ぶんで、おっちゃんの手作りならオススメの一番美味しい奴ひとつ選んでよ。と言ったら、「そりゃおれはよくわからねえな」という。
一番はじめにこれで飲むと美味しいって言ってたのにさ。
なんというか、正直というか。

よくわからないが、何だか仲良くなってしまって、長話をはじめてしまう。
確実にこのおっちゃんは不器用で愛のある人だという、いつもおいらのセンサーが作動。
おいらはいつからか、そういう人が本当に好きなんだ。
今度、広島に来たら、萩をいろいろ案内してやる。泊まるところなければ家も泊めてやる。工房も来いよ。
携帯電話の番号までくれる。

島根ならよく行くと言ったら、俺も島根好きだと言う。
広島にも会いたい人いく人かいるからなんて言ったら、来い来いとなって。

体壊している人が、寝泊まりは車の中だと言う。「漫画喫茶とかいいよねえ」って貧乏学生じゃないんだから。
その設定に値切り市の旗が揺れるのに値切る気を削られた。

けど、何も言わないでもすごく安くしてくれてしまった。
結局、他に漆器は買ったけど、欲しいような陶器はそのおっちゃんのだけだった。

家に帰ると、ちょうどその日、長野のオジサンが僕に日本酒をおいて行ってくれていた。
ナイスタイミング。

買ったおちょこに並べてお酒を注ぎ試飲。
あたり、ありっ。

おっちゃんいい仕事するぜ。


(欠けているのは貰った。後ろの漆器はまた別で福井県のもの。2日分。ちゃんときれいな写真のブログあった。勝手にリンク…金剛窯@大陶器市2010 金剛窯

次の日、午後暇になったので、追加でもうちょい欲しいなとおっちゃんにまた会いに。
んで、仲良くなったおっちゃんと更に無駄にぐだぐだお話ししてきた。
何という商売の邪魔。

めっちゃお互い、個人的なこゆい話になってしまった。
人にはいろいろな人生があるなってなもんで。
なんかいろいろ心が震えた。
おっちゃんも手元が震えたのか、レジを一桁間違えていたけれど。

おっちゃんは金剛窯の金剛稔明さん。

さっきGoogle先生でおっちゃんのことを調べたら、

同じギャラリーのサイトの作家のなかに、照井壮さんがいた。
照井壮さんの奥さんである照井織衣さんは、うちの親父が最後に雇った若い職人、最後の弟子なのだ。
結婚して、九州に行った。
九州で陶芸をやられている照井壮さんのところにお嫁に行ったのだ。

数年前、教室に来ていたうっしーが、若くして亡くなった時、たまたま、ご両親が百貨店で手にとってお返しにしたのが、照井さんの陶器だった。

偶然というのはなんともやらだねなんて話をしていた。

親父が亡くなる前、宮本英治のみやしんのやり手で宮本さんもべた褒めだった女の子が、結婚して九州に行った。
だんなさんはやはり陶器の人で、照井さんのすぐお隣だった。

ぼくはたまたま、おちょこが欲しくて、そして欲しいようなおちょこが唯一あって、強引におっちゃんに呼び止められて仲良くなっちまった。

ということで、世間はとても狭いので悪さはしちゃ行けません。
なんつうことは意外によくあることで。

そうそう、何かプレゼントしようとして(キャラ的に現在サンタモードなので)考えた末、寒いだろうから、ホッカイロ一箱買って持っていったら、メンチカツくれて、ゆで卵まで勧めてくれた上に、追加で買った陶器をアホみたいに安くしてくれて、おまけまでくれた。

「おたくが使ってくれるならいいよ」なんて有難い言葉。

こっちだって、おっちゃんが作ったと思って使ったら美味しく呑めるわってなもんで。

「明日も来いよ」って、何しに行くのだ。

せっかくそう言ってくれたのに、今日、僕は足を運ばなかった。
でも、なんだか、またどこかで会える気がする。

もう、片付けをして、そろそろ八王子を離れる頃だろう。
次は和光に行くと言っていた。
和光に行ってから、広島に戻るらしい。

毎日、販売大変だろうから、どうか体に気をつけて。
そして、また、何処かでお会い出来る日を心から祈りつつ。

本当にいいおっちゃんと会えて、僕はいま嬉しいのだ。
そして、素敵な焼物を有り難う。これでどんな焼物より美味しいお酒が呑める。

あえて、和光市に行くか。
なにしにだ。

 

7 thoughts on “世間は狭い、悪さはしちゃ行けない@全国大陶器市

  1. みかん より:

    はじめまして!
    私も今年の頭に陶器市で金剛さんとお会いしました。
    やっぱり人生の道のりなんかを深々語って…商売っ気そっちのけなんですよね^^
    八王子での素敵なエピソードをお聞かせ頂き感謝です。
    私も染織を趣味でしています。他の記事も楽しませていただきました!
    金剛さんが繋げてくださったこと、不思議に面白いなーと感じます。

    1. hiro より:

      コメントありがとうございます!!
      そして返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
      素敵な出会いで素敵な時間を過ごせて本当に幸せでした。
      みかんさんも何かの折にはどうぞよろしくお願いします!!
      近くを寄った折には、ぜひぜひ、お立ち寄り頂ければと。
      また、どうぞよろしくお願い致します。

  2. にゃんたろ より:

    このゆるさ いい です

    1. hiro より:

      ありがとうございますm(_ _)m

  3. みかん より:

    レスポンス頂いており、ありがとうございました。
    久しぶりにお邪魔して、みやしんさんの記事に、物作りを愛する一人として涙がボロボロ…。奥田さんの前進を熱く応援しております。

    実は岡山へ引越しまして、(それなりに)近いので金剛窯へ遊びに行こうと計画したのです。「金剛さんにお会いしたら、奥田さんにご報告したいな」と勢い込んでお電話したら「夏に遊びにきたよ〜」(ええー!)と、その話で盛り上がりました。
    「おじさんち、汚いから申し訳ないな~。奥田くんもがっかりしてたんじゃないかな~」そんな事ばかり気にされて相変わらずの金剛さんでした。

    魂のこもった物作りの場にいくと、息が深く出来るようになり力が湧いて来ます。ワクワクして止まらない。奥田さんの所へも是非いつかお顔出しさせて下さい!
    楽しい季節ではありますが、寒くなる折お身体大切にお過ごし下さいね。

    (私の出身が長野で、記事内の「…長野のオジサン…」に「やっぱり世間は狭いなー、悪さ出来ない」と改めてもの思う秋でした)

    1. hiro より:

      みかんさん
      返信が遅くなってしまいごめんなさい。
      いつもコメント有り難うございます。
      先日も八王子でおじさんに会いましたよ!!
      また素敵な湯飲みをセットで買わせて頂きました。
      そしたらそれを安くしてくれた上に、それ以上に高いお皿だとかをプレゼントだってくれてしまいました。
      その湯飲みがお気に入りで、いつもよりお茶を飲むようになってしまいました。
      器がいい生活ってちょっと素敵だなと思う日々です。

  4. せいじ より:

    はじめまして。
    ネットで金剛焼きを検索していて、一読、メールします。
    今日、2月18日、埼玉県、大宮の梅まつりで、金剛さんとお話しました。
    向こう付けの小皿を選んでいたら、焼きものの話になり、そこから、70年代の東京、レッドツエッペリンから、澁澤龍彦の話へ。
    他のお客さんに気をつかわなので、わたしが気をつかうという状態でした。また、会いましょうと約束しましたが、今の福山市から、萩に移り、本を読んで、暮らしたいと言ってました。
    お酒が飲めないとのこと。一緒に飲みにいこうと思ったのに残念です、
    思わずコメントしてしまいました、
    慣れないので、拙い報告ですが、今日のお昼前、なんか、すごいなつかしい時間を過ごしました。では。

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