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あの日、ものを作ることしか知らなかった僕らは、そうだ浴衣のブランドをはじめようと野心を抱き、日々作戦を練りました。

浴衣の世界に足りないデザインって何なんだろうか、この物に溢れた世界で新しく生み出す必要のものって何だろうか。

僕らはいったい何について知っていて、何について知らないんだろう。
それぞれの答えを探しながら進んできました。

未知の世界を進む中で、本当にたくさんの方々との出会いがありました。
そしてそれがブランドをはじめたことの最高の宝物にもなっていきました。

毎回写真を撮ってくれているフォトグラファーとヘアメイクの二人とは、1度目の展示の数週間前に出会ってから、その後ずっとの付き合いになりました。

いつしか展示場所がkayさんとの出会いで吉祥寺のpoooLになり、京都で展示をし、台湾まで行きました。

直接しか売らないと言っていたのに、大塚呉服店さんに出会い、坂本呉服店さんに出会いました。

たくさんのモデルさんに協力して頂きました。いつしかモデルはるうこに毎回頼むことになりました。何枚も貴重な写真を残してくれました。彼女の持っている魅力やアイデンティティは、たしかに僕らのデザインに必要なものでした。

そうして、ずっとの付き合いがどんどん生まれていきました。
その中で貴重な仕事をいくつも受けることが出来ました。
そういえば、伊勢丹でバレないように悪ふざけもしました。

2013年、いつかなくなってしまうだろう、工場のこの今しかない風景をその熱気を切り取りたいんだとフォトグラファーのkatomiにお願いして、いくつかの工場の撮影をするという企画がありました。町田の歴史ある注染屋さんに、僕らの浴衣がやっとこさ生み出されると言われた日、撮影に行きました。

カメラを持った僕らにとって、いまだに嘘のような本当だけど、
その日その場で、僕らの仕事を最後にもうやめるんだと、女性オーナーが背中を向けながらぼそりと呟かれたその景色を忘れることが出来ません。100年以上も歴史ある工場でした。時代が変わる中、代々続いた何かを守るために仕事を続けようとした人は少なくありません。
僕らの想いは思っていたよりずっと早く、導かれるようにその機会を持ち、katomiはその時にしかないものを写真で確かに残してくれました。
僕らは勝手に、運命を感じました。

この日で、もう無くなってしまった景色は気付かないだけできっと、たくさんあって。

この企画で撮影した整理工場もその後、なくなりました。作業する人たちの手の厚み。つくるのいえの近所にある染料屋さんもまさに先日とうとう現場を離れました。
自分が生まれた環境や大切な物が何か、すべきことは何なのか、それらは悲しいと想いながら何度も見てきた景色でした。
いつかと想ういつかは必ずやって来て。

淡々とした日常のものづくりは、戻ることのないあの日を、積み重ねていくことでもありました。
必要とされる物は、時代とともに変わっていくのだということを知りました。

自分たちが何を知らなかったか。日々の中で何を知ることが出来たか。

当初に想定していたよりずっと長くこのブランドを続けることが出来たのは、いままで展示に来て下った方々や、関わってくださったすべての方々のお陰だと思います。
会いたいと想う人が本当に増えました。
会えないままになってしまっている人もたくさん増えました。
僕らが目指した世界のために、いったいどれだけの人がいままで手助けして来てくれたか。

僕らの存在が、またどこかの誰かのつながりになっていくことがあればと、心から願います。

そして、終わりと始まりは、別れと出会いは、いつでも一緒だと信じています。

大切なあなたとあなたの大切な人の明日が、永遠であることを祈って

どこまで叶ったかわからないけど、僕らはあの日、本気でした。

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花暦

毎年、季節になると咲く花がある。
庭には、祖父が好きで大切に植えた花がいまも変わらない姿で咲いている。
祖父が父が生まれた時、記念に植えた花があって、
私が生まれた時、記念に植えてくれた花がある。
祖父が側にいた追憶の中のあの日と同じように、色とりどりの花が鮮やかで、
時々吹き抜ける風が葉を揺らす。
私はこの景色が好きだった。
日々日常の風景は変わっていくけれど、
この場所から見る景色はいまも何も変わらない。
いくつかの花を摘んで、仏壇に供える。
今日私は、新しい撫子の花を植えた。

phro-flo 2013 花暦より

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つくるのいえの縁側からぜひ、あの日描いた景色の続きを。

過ぎ去ったあの日は、きっと変わらずいつもそばに。

8年間、本当にありがとうございました。

いままでのすべてに感謝を込めて、新しい明日を。道はどこまでもつながってその先へ。
そしてまた会える日を。

phro-flo 2018.7

 

最後の展示のご案内はこちら
https://www.facebook.com/events/400268293827318/

 

 

 

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