ただの自分になりたい時というのはある。 社長であるとか、先生やってるとか、人に偉そうに言うとか、穏やかに言うとか、誰かに高く評価してもらえるとか、友達や彼女の前での自分とか。全部なんとなく決まっている。 そのなんとなく決まっている自分という[…]

   子供の頃から、僕にとってそれは当たり前の風景だった。増築を繰り返した工場の中はひどく入り組んでいて、僕は、その暗闇のどこかに知らない世界への扉があると信じていた。  至る所から蒸気が噴き出し、その工場を構成する柱の一本一本が好き放題に[…]