たまにはブログも更新しようっ。ということでTwitterのつぶやきをちょっと書き換えまとめました。

現在、matohuがスパイラルで展示会をしています。
http://www.matohu.com/keicho/index.html

matohu 「慶長の美」 展

期間 2011年1月8日(土)〜19日(水)11:00〜20:00
会場 スパイラルガーデン(スパイラル1F)
入場 無料

5年掛けられた慶長の美。
コレクションの準備前になると
毎回のテーマについて難しい話を堀畑さんが説明してくれます。
別にこういうデザインで加工をお願いしますと言われるわけではありません。
こういうことが出来ますかと言われる前に、テーマを話され、その時代の精神性や背景を話され、
どう思いますか。何かいいアイデアありませんか。となります。
作ることに本当の意味で関わらせてくれるわけです。 

matohuとの出会いはブランド立ち上げ当初に遡ります。
非常に丁寧な姿勢と勉強熱心な姿勢がそこにはありました。
知らない事は学ばなければいけないと当初は工場でやっている教室にも参加されていました。
慶長の美、前期はそういう背景のこもった物づくりがあったと感じています。

織部からmatohuのコレクションはスタートしました。 http://bit.ly/gy8AkP
布に和紙を貼り表現することからはじまりました。
前半はまた、主に僕の父親が関わっています。
この頃は、まあ今もですが自分はのらりくらりでたいして働いていません。

2回目である帷子では独特の防染感やムラ感を表現しました。
http://bit.ly/gxqBZ2
展示場にもその経緯が布の再現にて飾られています。
デザイナー自らによる手作業の手間がこの頃よりすでに掛けられていました。
防染(色を防ぐもの)を掛け、あえて手で地を染め、ムラ感を表現しています。

高台寺蒔絵では金を嵯峨本ではパールのプリントを。と進んでいきます。
南蛮ではイイダ傘店の傘がショーの最後に出てきたことを思い出します。
螺鈿の貝に似せたプリントというのもしましたね。光の反射だとか、あれも実験した。
また回を重ねるごとに、ボリュームも増していきます。

志野ではその陶器に表現される鉄絵を布の上で表現しました。
http://bit.ly/fsVJ8C
やはりのらりくらりとしていた僕は工場の隅で当時すっかり周りで流行っていた錆び染めをして遊んでいました。
父親ではなくて、自分が本格的に関わらせてもらうようになったのはこの頃からです。

ちょうど僕は文化服装のテキスタイルの学生を教え始めて1年目でした。
誰の真似をして錆び染めをしていたかというと当時の学生の真似をしていたんです。
僕のオリジナルではなく、学生の、矢澤さんの真似です。イイダさんの奥様でもある佐々木さんも卒制で出されていましたし。

あとひとつ記憶があって、2004年10月、奥田塾に参加していた牛田みのりさんがフランスに旅立つ前、最後にやった展示会が錆び染めでした。うちの工場から錆びたものを回収しては持ち帰っていました。錆を集めていたのを思い出します。
彼女はそれから、1年半後、癌にてこの世を去りました。まだ30歳だった。http://bit.ly/hPcfi0

そんな真似事で遊んでいると堀畑さんに何か楽しそうなことやっているねとなりました。
ちょうど、次の次のテーマにまさに必要で、ぜひ使いたいから、今度話がしたいと。
遊ぶ分にはそれで楽しかったのですが、そこから商品にするなら実験せねばと言うことになります。
当時錆と言えば、NUNOだったりイッセイミヤケの菊池さんだったりが発表していました。
過去にもその表現を求めた人はいます。
まあ同じにやっても面白くないしと言うことで、別の方向から技術的知識も利用してと技術資料を積み重ねていきました。
根拠のない状態や詰めの甘い状態は納得いきません。気付いたら資料が山積みになっていました。

菊池さんの錆をはじめて見たのは今はない青山のパワースポットにあった中華屋さんに父親と二宮先生と食事をした時でした。
父親は青山におしゃれではない長靴で行っていて、みんなに突っ込まれていたから、雪の日の後だったかもしれない。
長靴で青山行くなと言う。
菊池さんの錆び染めの型がその二階に飾ってあってかっこいいなあと。すごく印象に残った。

データを詰めていった結果出来上がったのは綺麗すぎる茶色の染めでした。
ただ、綺麗になってしまった。遊び気分に雑に染めていた方が断然良かった。
錆の魅力的な写真だとか、実物だとか見ながらあんな感じだよお。
どうしたら有機的な表現になるか。多種の色を出すこと、色の合いをコントロールすることまで出来ていました。

matohuさんに資料を出してどうぞお好きな技法をと。陶器に書かれるように、絵を描くことを選ばれた。
長着だけではなくて、ショーの全ての靴も錆です。その靴の染めが一番自分は好きです。

ショーは終わったわけですが残った山の資料を見ながら、自分としては志野ではない錆びも当然やりたくなる。
技術的にまだ補完出来てないものもある。
当時、一緒に手伝ってくれてた吉田さんと一歩進んだ錆び染めをやりました。
それは実は納得出来るものが出来ましたが今も引き出しの中です。
しかし、今思うと、当時の僕は暇だった。。
とはいえ、まだやり残している感があります。使っていない技術があって表現にしたいイメージもある。
納得していないものはちゃんと形にして浄化したいですね。
錆じゃなくても他の色で同じように出来るのであればそれでいいんですよ別。
その面倒な手を使う価値を出さなければその素材自体に申し訳がない。
それでないと何だか嘘っぽいですしね。

慶長小袖ではぼんやりにじんだ感じというのを表現すべく、技術的にもにじませるための手法はいくつかあります。
どれにしようか迷ったわけですが刷るのが非常に難しくて職人さんとの駆け引きになった。 matohuさんも僕も。
素敵な大柄になったなあなんて、呑気に思うわけですが。
まあでも、良い生地というのはやっている最中に手応えがありますね。
http://bit.ly/fmLPa9

次は辻が花です。辻が花の職人さんもいるしこれは出る出番ないなあと呑気に構えていたわけです。
辻が花というのは絞りによって柄を染める1度は滅んだ技法です。
型染めの前は絞り染めでしたから、絞りで絵まで描くようになっていた。
久保田一竹かと聞いたら今回はそうではないという。
matohuに関わると知識もまた知らなければならないから、本当に毎回自分の糧になる。
matohuの歴史資料への丁寧な姿勢はいつも有難い時間です。
二人はコレクションとコレクションの空いた時間にしっかり実物も見に行くという。
今回はどこどこに行ってきて、何を見てきたと言う話もしてくれる。

辻が花を型でやるなら、絞りのあの、絞った立体感が残るような加工。
これは駆け引きです。
お互い分かっている。やっぱりあの技法ですよねと。でもあの技法は使いたくない。
塩縮ですよね。と聞くと、そうなんですよそう考えていた。それが出来ないか。出来ますかねと言う。
塩縮というシルクを縮める技法があります。
その中に昔、父親と産技研の小林研吾さんが2人がウールへの塩縮技法を開発した。
ウールというのは今までの方法では出来なかった。
シルクにも展開出来る方法で、それを使えば縮める部分に色を入れることも出来る。
某教授がその技術の著作権を取ろうと欲を出す中
2人はすっかり公開技術にしてしまったので、出回っている技術ですが色を入れることは出回っていない。
難しいんです。やりたくない。
帰ったら、父親にこれ誰がやるって言ったんだと言われたんで、いや僕ですと。
で、誰がやるんだ。というから。僕は難しくて出来ないからあなたですと。
だって面白いじゃん。と無責任に。。
父がすごい意識高くやっていたのを今も思い出しますね。まさに集中力が必要だった。
洗っている時のあのドキドキはたまらなかった。
http://bit.ly/euBg5m

次はかぶき者ですが、ここまで連続でショーのトリを取ってるよと。すっかり調子に乗っていました。
当然足をすくわれるわけです。
「生過ぎたりや廿五(25)」の精神をちゃんと汲んでいなかった。
なので不採用です。ショーを見ながら、ああそういうことかあ。かっこいいなあと。
でも、ショーが終わった後、堀畑さんから電話が鳴る。
ショーの構成上、せっかくのものを出せなくて申し訳ないと。展示会にはしっかり出るので。
とても素晴らしいものが出来たので。と、そこまで気を遣ってくださったことを思い出します。

慶長の美ラストははじめと同じ織部です。
10回分内容が決まっているんですか。
10回も先を決めていたら自分だったら途中で嫌になりそうだなあ。
ましてや、先長そうですねえ。と、思っていたけれど。あっという間に一周しました。
ラストならラストの意気込みでやりたいと。まあとはいえ、やれることなど自分はたかが知れているわけですが。
最後の長着は織りと染めの組み合わせによる表現です。
染まる糸と染まらない糸をストライプ状の柄で織り込みそのラインと濃度変化を表現しています。
これはかなり早い段階で決まりました。
贅沢な1枚です。そして、はじめの織部に対するメッセージになったかどうか。。
http://www.matohu.com/keicho/10ss/index.html

あっという間の10回でした。いろいろ挑戦させて貰えた。ここに載せていないものもたくさんありますし。
自分は失敗ばかりでしたが。何より自分にとって貴重な経験でした。関わらせていただいたこと心より感謝しています。

元パターンナー二人、今はデザイナーな訳ですが、その二人の長着というひとつの形の中に多くの布の技術を見ることが出来ます。
物づくりの背景や空気感に触れることが出来るかも知れない。
また年月により古くならずに、今も斬新だと感じさせてくれる物づくりです。
実際、お二人はまず、自ら技術に触れられることが多い、辻が花を実際に絞りに行かれたり、ニードルパンチを自らされたものもあった。
すごい勉強熱心に、その技術に触れられている。

ちなみに会場に流れる動画や資料も今回のためにお二人が工場まで足を運ばれ、作られたものです。
工場を去る時、ぜひ奥田さんに(亡き父)に見て欲しかった。
と、言葉を残してくださいました。
お忙しい中、葬儀の折も通夜も告別式も来て頂き、1月にぜひ奥田さんに見てもらいたかった展示会をやるのだと。

展示会のレセプションに足を運び、1点1点に触れ、本当に素晴らしいクリエイションに関わらせて頂けたんだと
心から感じました。
再現の動画を撮りながら、ひとつひとつの記憶も蘇ってくる。
毎回、大変な時ほど、イッセイだとかやっていた父親もよく言っていた言葉なのだけど
2度ともうやるかって思うんですよね。
でもショーを見ちゃうとすっかり感動してしまう。
あの布がこんな素敵になるのかと。
自分がたいしたことが出来ていないものも、お二人の力ですばらしいものになっていたりする。
ショー見ちゃうと、ああ次はもっと頑張らなければと思っている。

自分の視点から「慶長の美」の5年に触れさせて頂きました。
展示会会場では当然、奥田染工場以外の技術に触れることも出来ます。展示期間はまだ残されていますのでぜひ。
19日、水曜日までです。
http://www.matohu.com/news/2010/12/matohu.html

長すぎるつぶやきどころか、長すぎるブログですね。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

※また、写真はmatohu HPより勝手ながらお借りしました。

 

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