1ヶ月ほど前のお話。

当日の工場の空

青は昔から人にとって作り出すことが難しい色でした。
それは草木から布に染めることもそうです。
古来の日本人にとっての青とは、露草(縹)の青であり、その花色とはつまり
移り変わりやすきもののこと。

「つきくさに 衣いろどり摺らめども うつろう色というが苦しき」
「月草に 衣は摺らむ朝露に 濡れての後はうつろひぬとも」

月草とは露草のこと。
小さな花びらをあれほど集めて摺り染めしたというのに、すぐに色が変わってしまう。
露草とは今は青花ペンとして使われている色と同じものです。
だから朝露に濡れても色が変わってしまう。

それでも、青に染めるためにその労力を惜しまなかった。

変わらないことは人が古来から求め続けている願望です。
人の平等とはすべての人が日々変化し、同じく死を迎えること。

今、人々が手にしている変わらない色とは、それが当たり前ではなく、
それを求めた人々の一つの到達点です。
それでもなお変化することにも同様の価値があることを忘れてはいけません。

その後、藍の青を手に入れます。

草木の青とは今もそれだけの選択肢のままです。

人間国宝である志村ふくみさんは
緑は草木の染液から直接染めることのできない色だと言われていました。
これほど緑に囲まれながら、それそのものの色を染めることが出来ないことを
「より深い真実を私たちに伝えるために、神の仕組まれた謎ではないだろうか」
と言われています。

一年前、父親が大病をし入院し、生きるか死ぬかの時、
入院って言うのは暇で仕方ないから草木染めの勉強の続きをしたいと言うから
嫌がらせなほどのありったけの草木染めの本を買い集めプレゼントしました。

たくさん買ったのはいいけれど、結局父親はそんなものを読む気も起きなかったらしく
姉が買って渡した殺人事件が起きる小説や司馬遼太郎や何やらばかりを読んでいました。

それが最近また勉強を再開しているようで、その中でも草木で緑に染めることを勉強しています。
押し入れに押し入られた本もやっと引っ張り出されたようで。。

数年前から文化服装学院の2部の学生有志による奥田染工場で実習が行われているのですが、
父親はすっかりその草木染めをやってみたかったらしく。。。
ヨモギをたくさん集めて緑に染めました。

奥にある山桜の葉の緑と布の緑。

まだ実験途中らしくこの前はクズで染めていました。
別にそんな仕事を受けているわけではありませんし
仕事を受ける気もありません。
お金にならないことが父親らしさですから。

いろいろな方の書物を参考にしているようで出来ればここに書きたいし紹介したいのですが。。
技術の説明も迷惑にならない形で、少しは触れられればいいのだけど。。
自分はグースカ寝るばかりでその内容を知らないのです。。

父親が緑に染めていた。
今日はそんなお話でした。

色と人、また別の形で触れられればなと思います。

 

3 thoughts on “青の色

  1. coccaやま より:

    先日社長さんに頂いたヨモギの布、とってもとってもやさしいやさしい色で、
    自然の色って、こんなにもやさしい色なんだ~~~と、なんだか嬉しくなりました!
    ありがとうございました!
    社長さんが研究されているお話を聞いて、私も勉強したくなりました!!

    1. hiro より:

      コメントありがとうございます。
      社長に伝えておきます。
      やまさんにお渡しした後、
      また再度、今度はたくさん作っていろんな人にうれしそうに配っていました。
      最初の1枚、ぜひ大切にしてください~~~。

  2. hiro より:

    藍と露草についてはwikiをば
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%B9

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